古閑 悠也(CV:菓子宮)
――私たちは、地獄にいました。
うちは母子家庭だった。
家族は、母と、兄と私。父親は顔どころか名前すら知らない。
私と兄とは、幼い頃から、母親から酷い虐待を受けていた。
数年前、実家を離れ、逃げるように東京に出た。
誰にも言わなかった。相談できる相手なんていなかった。
なんとか仕事を見つけ、恋人もできて、それなりにうまくいった。
ときどき、罪悪感や喪失感にさいなまれながらも、
新しい人生を送ることができている実感に、喜びも覚えていた。
ある日、知らない番号から携帯に電話がかかってきた。
留守電を聞いたら、実家の兄の声だった。
『母さんが死んだ。葬式やるから帰って来い』
……ぼんやりしたまま、新幹線のチケットを取って、気が付いたら、実家の玄関の前だった。
この時、もっとよく考えていれば、こんなことには、ならなかったのかな。
感想
本編
私は何も言えることがありません。
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